
アートメイクのレーザー除去は「黒変リスク」「赤くなる、黄色くなる」「ダウンタイムの違い」などレーザー治療の中でも特殊で少し複雑です。
シミ治療はしっかり理解できているけど、アートメイク除去はイマイチ理解しきれていない美容ナースさんも多いと思います。今回はそんな美容ナースさん必読の記事です。

今回は美容看護師が理解しておきたい「アートメイク除去の原理」と「お客様のよくある要望」について現場で生かせるポイントを徹底解説します。
アートメイク除去はシミと違って除去するターゲットはメラニンではなくインクになります。インクを除去するということは、インクの成分によってはレーザーを当てることで逆に黒くなったり黄色、オレンジ、赤色になることがあります。
なのでお客様の想像と実際のアートメイク除去にギャップが生まれやすいのでしっかり説明が必要な治療になります。
この記事で分かること
・アートメイク除去希望のお客様の特徴
・レーザー除去の仕組み
・薄くなるまでの経過
・よくあるトラブル
・看護師が関わるポイント
アートメイク除去の原理
アートメイクに使うレーザーは主に「ピコレーザー」「ナノ秒レーザー」が多いです。
レーザーの基礎を復習しながら美容ナース向けに徹底解説していきます。レーザーで大切なのは「パルス幅」「波長」「出力」です。
特にアートメイク除去で大切なポイントは「波長の選択」です。なぜなら、アートメイクはインクによって色味が違うのと治療の経過で色味が変わってくるからです。色味に応じて変えるのは「波長」になります。
レーザーの種類(パルス幅)
レーザーのターゲットとなるのは「インク」になります。ナノ秒よりピコ秒の方がインクを砕くのが得意とされているので、ピコ秒レーザーの方がアートメイク除去に向いてると言われています。ただナノ秒レーザーでも除去出来ないわけではありません。
パルス幅についてはこちらの記事をチェック↓
レーザーの種類(波長)
アートメイク除去において「波長」は大事なポイントになります。なぜなら、色素によって波長を変える必要があるからです。

ここでレーザー基礎のおさらいですが、レーザーの波長は届く深さだけでなく「ターゲット」によって吸光度が変わります。色素により吸収されやすい波長と吸収されにくい波長があります。
一般的にはアートメイクの色素が黒の色素が強ければ1064nm,755nmの波長を使います。
オレンジ、黄色などの暖色系の場合は532nmの波長を選択します。
黒系に1064,755を使う理由
レーザーの吸光度を確認してみましょう。

532nmの波長は黒色にも反応しますが、赤色の色素にも反応が良いのでどっちの色にも反応します。アートメイクは黒の色素以外にも「黄」「赤」のインクが混ざっている事が多いです。1064nmは暖色系の反応が悪いので黒色系の色素にだけ反応してくれます。
なのでアートメイクが黒系の場合は波長の長い755nm、1064nmが適応になります。アートメイクの色素が暖色系の場合は532nmが適応になります。
治療の流れ 波長の選択
医師の方針によりますが、先に1064nmを使ってアートメイクの黒の色素を抜き次回以降のアートメイクの色味を見て暖色系になっていたら532nmを使用、まだ黒の色素が強ければ1064を使用するという流れが多いです。
先に1064nmを使用する理由としては、最初に黒の色素を抜いておくと効率が良いからです。
初回に強く反応する532nmを使用すると、色素がしっかりある状態でダウンタイムも強く出る可能性がある、黒変するリスクが高く、黒変してしまうとアートメイクの色素の黒なのか黒変なのかも分かりにくくなってしまいます。なので先に黒の色素を1064nmで抜いてから暖色系になったら532nmを使用する事が多いです。
最初から暖色系の色素だった場合は532nmを使用する場合もありますが、初回はマイルド・低リスクで照射したい際はあえて1064nmを使用したりします。
※波長の選択は医師によって考え方が変わるかもしれません
なぜ「赤」「オレンジ」「黄」になるのか?
アートメイクの色がブラウンの場合、ブラウンのインクが「黒」「赤」「黄」が混ぜられて作られている事が多いです。レーザーは「黒」により反応しやすいので、最初の1回目は黒い色素だけ抜けて「赤」「黄」が残存しオレンジ・赤・黄色の色素が残る場合があります。

黒の色素が抜けて暖色系になったら「赤」「黄色」の色素を除去していきます。暖色系に変化したら、反応する短い波長(532nm)を選択して除去していきます。
経過としては,「ブラウン→オレンジ→黄色」と辿ることもありますし、「ブラウン→赤」など人によって違います。アートメイクに使用しているインクやレーザーの出力によっても経過は変わってきます。
最終的には「黄色」の色素が残る事が多いですが、黄色になると肌の色素に馴染むので少し黄色が残っていても気にならなくなったら除去終了される方もいます。
なぜ黒変するのか?
アートメイクに使用するインクによっては、レーザーを当てると黒く変色する可能性があります。
アートメイクを入れたクリニックでレーザー除去する場合はインクの種類を把握できますが、別のクリニックで除去する場合はインクの把握が難しいです。海外でアートメイクや違法サロンで入れたアートメイクは尚更把握が難しいです。
もともとしっかり黒い、グレーっぽい色味の方は黒変したとしてもあまり目立ちません。もともと明るめのブラウンやベージュっぽい色の方が黒変した場合は目立ってしまいます。
黒変したらずっとそのまま?
黒変した場合は、次にレーザー照射するまでそのまま黒い状態です。
黒に変色したアートメイクにレーザーを照射すると、レーザーは黒に反応するので薄くなる事が多いですが、どのくらい薄くなるかは個人差があります。
1度黒変しなければもう黒変する可能性はない?
1度黒変しなかったからといって、次回以降黒変しないという訳でもありません。
2回目以降から黒変する原因として考えられる事は…
・出力を上げたり、波長を変えて照射すると、しっかり反応して黒変する可能性がかります。アートメイク除去は1回目で色素が薄くなれば2回目は出力を上げたり波長を変える事がありそれが原因で黒変する可能性があります。
・アートメイクは2回以上入れる事が多くアートメイクの色素がレイヤーになっている可能性があります。1回目のレーザー除去で浅い部分の色素が抜け、2回目のレーザー除去で深い部分の色素が反応して黒変する場合もあります。また、アートメイクを入れた際に1回目と2回目で使っているインクが違ってると1回目の除去と違った反応をする可能性もでできます。
色むら・まばら抜けする場合
平等に照射したのに、色むらやまばら抜けする場合があります。考えられる原因としては、アートメイクを何度か受けたことがある場合は足りない部分だけ色素を入れていきます。1回目と2回目で施術者が変わったり、インクが変わるとインクの入っている深さやインクの濃さが違ったりします。
こういった場合は、レーザー除去を均等に照射してもまばらに色素が除去され色むらに感じる事があるかもしれません。
このような現象になったとしても、次回照射で調整すれば良いのですがお客様が手技不足やしっかり照射されてないと感じる場合があるので説明が必要になります。
完全に除去することは可能なのか
今まで私が見てきた経験上ですと、完全除去は難しいと考えています。完全除去と言うより「目立たなくなる」が適切だと思います。アートメイクを入れる前の肌の色に戻れるという期待はしない方が良いと思います。再度アートメイクを入れたり、眉毛をしっかり生やしたりすれば以前のアートメイクはほぼ目立たない状態にする事は可能です。
アートメイク除去を10回以上受けたお客様でも、良く見れば黄色い色素が残っているのが分かります。ただこれは近くで見ないと分からない程度です。
「完全除去可能です」と謳っているクリニックの症例写真も良く見るとやや黄色い色素が残っていたりします。人によっては完全除去なのかもしれませんが、完全に元の肌と同じ色に戻るかと言われると期待させてしまう可能性があると思います。
波長の違いによるダウンタイムの違い
1064より532の方がダウンタイムが強く出ます。532の方が浅い部分に反応する事や、吸光度のグラフを見て頂くと分かるようにメラニンとヘモグロビンへの反応が良く、ヘモグロビンに反応するということは内出血もします。
良くあるトラブルとしては、初回のアートメイク除去では黒のインクに反応する1064nmで照射して2回目以降は色素が暖色系に変化したので532nmを使って照射するとなるとダウンタイムに大きい違いが出ます。そうなると不安になる方やクレームへと繋がります。実際のダウンタイムの写真を見せる等して事前の説明が大切になります。
アートメイク除去に必要なリアルな回数
「アートメイク除去は何回必要ですか?」これは良く聞かれる質問です。また、1回で薄くなると思っている方も多いです。
必要回数は個人差が大きいです。最低でも3〜4回、多いと10回以上除去される方もいます。
再度アートメイクを入れたい場合
除去希望の方で「今入っているアートメイクを全部消して、新しく入れ直したい」という方がいます。
アートメイク除去は最低でも数回必要になりますし、数ヶ月空けてレーザーを照射するので、アートメイク除去終わるまでに半年かかる場合もあるし1年以上必要になることもあります。経過が良い方は割と短期間でアートメイクの入れ直しが可能になるかもしれません。(アートメイクはインクになるのでシミと違って何回回数が必要になるかはクリニック側も予想しにくいのです)
その間、お客様はセルフメイクでカバーしてもう必要があります。レーザーの種類によっては眉毛が一時的に少なくなる事もあります。何か予定があってアートメイクを入れ直したいと思っている方には「いつ次のアートメイクができるか分からないこと、長期戦になる可能性」をしっかり伝えておきます。
レーザー除去の終わりはどこ?
レーザー除去である程度薄くなったけど、どこで終われば良いのか分からない場合は「ご本人が気にならなければ終了」で良いと思います。
特にアートメイクが黄色になってくると、黄色は肌色に近いので、近くで見ないとアートメイクが分からない程度にはなります。除去に通っている間は毛が薄くなっている事もあるので、アートメイクの色素が目立つ事がありますがまた毛が生えてくると残ったアートメイクは目立たなくなります。アートメイクを再度入れる場合も、再度入れたアートメイクの色素が濃いので除去して薄くなったアートメイクの色素は相対的に目立たなくなります。
お客様にアドバイスするとしたら
・気にならなくなったら終了で良い
・毛が生えてきたら残ったアートメイクは目立たなくなる
・セルフメイクで上からカバーする
・アートメイクを再度入れ、以前のアートメイクを目立たせなくする
上記をお伝えして、どこで終了にするか検討してもらうと良いと思います。
レーザー除去後、肌の中では何が起きている?
レーザーを当てると、真皮内のインクは粉砕しマクロファージによる貪食が始まります。こちらの貪食に時間がかかるのでアートメイク除去は3ヶ月くらい空けて治療することが多いです。炎症の少ないピコレーザーの場合は治療間隔をもっと短くしてるクリニックもあるかもしれません。
マクロファージの貪食がしっかり終わり、肌の回復を待ってから再度レーザーを当てるという流れです。
私もアートメイク除去をした事かありますが、受けた側の体感としては
・施術直後から色が薄くなった変化がある
・施術後1週間はダウンタイムもあり色味の変化あり
・施術直後~1ヶ月の間はゆっくり色味の変化あり
・施術後1ヶ月~3ヶ月は大きい色味の変化は感じませんが比較すると薄くなっている。
という体感です。お客様の中にはレーザー照射後1ヶ月以降から変化がないので「3ヶ月もまたずにレーザー照射したい!」という方もいます。そういう場合は「しっかりマクロファージがインクを体外に排出してくれて、肌がしっかり回復してから照射した方が1回あたりの効果が高いですよ」と説明すると良いと思います。
同じアートメイク除去でもダウンタイムも大きく変わる理由
アートメイク除去は色素によって波長を変える為、ダウンタイムが大きく変わる事があります。
アートメイクは1064nmから開始して色味が暖色系(赤・オレンジ・黄)になったら532nmの波長に変更することか多いです。
1064nmの波長の場合は強い赤みや内出血は比較的少なめですが、暖色系のアートメイク除去を行う為に532nmを使用する場合は反応が良い事に加えてインクだけでなくヘモグロビンにも反応する為内出血が出やすく赤く腫れやすくなります。
1回目は1064nmの波長を使用してダウンタイムが少なかったけれど2回目以降は赤く腫れて内出血もしたとなると経過が違うのでお客様も不安になります。経過の違いを事前にしっかり伝える必要があります。
アートメイク除去する場合、眉毛は剃らないといけない?
クリニックによってはレーザー除去する部分の毛を剃って当てる場合もありますし、毛を生やしたまま照射する場合もあります。毛を剃る場合は一時的に毛が短くなるのでセルフメイクが必要になるかもしれません。
毛を剃っている状態の方が、物理的に毛がないのでしっかりアートメイクに反応しやすくなります。
部分的な除去の場合は少し剃っても困りませんが、全眉除去する場合「眉毛がない+アートメイクも薄くなっている状態」でしばらく過ごすのはセルフメイクが大変になる可能性があります。
毛を剃らないで除去する場合は、毛を掻き分けて照射しますが、毛量が多い方などは毛がレーザーの邪魔になる可能性があります。
剃るか剃らないかは医師の方針とお客様のライフスタイルによって変わると思います。
レーザー後、毛が生えてこなくなったけどまた生えてくる?
アートメイク除去で使うレーザーは、脱毛レーザーと違いパルス幅が短いので「理論上は脱毛レーザーとは違う」ですが、ただ全く毛に影響はないかと言われるとそうでもないように思います。特に元から眉毛が細く少ない方には説明の仕方には気をつけた方が良いと思います。
脱毛に必要なパルス幅はミリ秒のロングパルスですが、アートメイク除去に使うレーザーはピコ秒、ナノ秒と短いので毛根組織を焼くにはパルス幅が短すぎます。ただアートメイク除去は強い出力で行うので多少は毛根に影響が出る可能性がありそうだと感じています。
照射直後はレーザーが毛に反応し一時的に毛が生えない状態になる事もあります。(毛根が破壊されて脱毛されているかは不明)
アートメイク除去レーザーは2~3ヶ月に1回ペースで照射する訳ですから、1回目の除去で毛が一時的に減りその後やっと生えてきたタイミングでまたレーザーを照射すると再度毛が一時的に減ります。なのでお客様からしたら通っている間「眉毛生えてこない」と思われます。
アートメイク除去を終了すれば眉毛は生え揃ってくる訳ですが、この通っている期間は眉毛が一時的に少なくなり除去を終了すれば生え揃ってくること、どのくらい生え揃うかは分からない事を説明します。
まとめ
今回は美容看護師向けにアートメイク除去の解説をしました。アートメイク除去はターゲットがインクであり、そのインクは様々である事が難しい点になります。
アートメイク除去は、回数がかかる事、黒変のリスク、色味の変化、ダウンタイムが変わる事などお客様へしっかり説明する事が大切だと思います。
現場で働いている身としては、アートメイク除去はお客様が思っていた経過と違うという点でクレームになった事例が何度かあり説明の重要性を思い知らされました。
看護師はお客様に分かりやすい説明をして、お客様に不安を与えないように関わるのが大切だと思います。

